=無理に動かしてはいけません。=


 救って欲しい、なんて。
 離れて、離さないで。
 そんなことばかり願ってしまう俺は、何?


 感覚のなくなってきた足を押さえられた。
 矛盾してきた俺の、気持ちを抑えられる。
「他のこと考えるなよ」
 不満そうな声が身体の上から降ってきて笑う。
「知佳のことしか考えてないってば」
 揺さぶられながら答えた。

 
 なんの脈絡も無かった。
 大好きな親友、愛しい人間。
 思いが勝手に発展したのはいつだったかなんて覚えちゃいない。
 それと同じように湧き上がる感情。
 飽き。


 だから終わらせようと思った。
 楽しかったよ、位の言葉を交えて。
 ただ見捨てるには愛おしかったから。


 ところが口は勝手に動く。
 別れを惜しんで、本心を伝えたくて。


「知佳―」 


 ここまで自分がコントロールできなくなるなんて初めてだ。
 

「好き」


 馬鹿だ。
 これじゃまるで知佳と付き合えないから離れるみたいじゃないか。
 ただ飽きただけ、なのに。
 知佳のせいみたいで、こんな言い方は卑怯だと思う。


「オレ、も…」
 ごめんね、知佳。
 優しいお前にあんな言い方して。
 ・・・?
「オレも芝の、こと…好きだ」


 この感情は何というのか。
 不満?計画を壊されて。
 そうだ、と胸を張って言える自信はない。


 懲りないな。
 自分の終末を望む気持ちに声をかける。



「えっちしようよ」



 いい加減目を覚まして。
 少し中世的な顔かもしれないけど俺は男で胸はないし、いらないモノはついてるし、受
 け入れる場所もない。


「知佳はじっとしててくればいいから」
 あまりに捨て身な自分に笑いがこぼれる。
 その笑みをどう映したのか、唾を飲む音が聞こえた。


 じっとしている知佳を見つめながらズボンから自身を取り出す。
 感情とは裏腹に既に濡れ出しているそれ。
 見られてると思うと熱くなってきて本来の目的を忘れて擦りだしそうになる。


「や…ん、気持ちイイ」
「―知佳」
「イっちゃう」
 AVで聞いたようなセリフを並べて吐息を混ぜる。
 考えていなかったのに勝手に混ざる。


「んっ………」
 もう少し。
 あと少しでいきそうというところで止めた。
 下着ごとズボンを下げる。
 空気がやけに冷たくてぞくりとした。

 きゅっと締まった蕾に指をあてがう。
 息を吐いてリラックスして。
 先走りでべとべとになったはずの指を推し進める。


「なにしてんだよ…芝」
 そう、その顔。
 奇怪なものを見るような眼、怯えさえ映す瞳。
 その間にも指は進んで何かにあたる。
「ふぁっ」
 抑えきれなかった嬌声に驚き、指の形を鮮明に知らしめる。


「なぁ、芝」
「いれて」
 チャックに手を伸ばし引き下げる。
「入れたいでしょ?」
 硬くなってしまっている知佳のを取り出す。


「芝ぁ」
 なぁ、もう諦めて逃げろよ。
 親友の1人位無くなっても平気でしょ?
 情けない声をあげて、知佳は俺の腰にそっと腕をまわした。



「そんなにオレが嫌い?」



 嫌い?
 俺が知佳を?
「そんなわけ―」
「あるんだろ?」
 こんな時に限って返す言葉が見つからなかった。






「ダチだから、親友だからってずっと我慢してた」
「でもそれはダチなことが前提で嫌われてるなら話は違う」
「ダチはこんなこと…しないもんな」
 指を引き抜かれて代わりに知佳のモノが押し付けられる。


「痛いっ、痛いよ…知佳」
 泣くほどの痛みじゃないのに涙があふれる。
 感情が氾濫してしまったみたいだ。
 俺が反乱している。
 

 感覚のなくなってきた足を押さえられた。
 矛盾してきた俺の、気持ちを抑えられる。
「他のこと考えるなよ」
 不満そうな声が身体の上から降ってきて笑う。
「知佳のことしか考えてないってば」
 揺さぶられながら答えた。 
 それが嘘にしか聞こえないと知っててもそう言うしかなかった。


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