=意地っ張りな彼らと私=


「おめでとー」
 4つの声が重なって私は無性に恥ずかしくなった。
「あ…ありがとうございます、私のために」
 誕生日パーティーなんて開いてくれて。


 思徒くんの時と同じ飾り、同じ料理。
 明らかに使いまわしの垂れ幕。
 わかっていても嬉しかった。
 心の底から祝ってくれる人がいることが。


「んっじゃ、オレら用事だから」
 そんな束の間の幸せは脆く崩れ去った。
 知佳くんと思徒くんが窓枠に足をかける。
 暦さんはもーと怒ってるけど彼らがそんな言葉を聞くわけがない。

 
 分かっていても寂しい時はある。
「ゾンビ狩りなら私も」
 二人の背を追いかけようとすると大きな腕が立ちふさがった。


「今日の主役のおまえさんが行ってどうすんだ」
「でも…」
 バサッと布の翻る音がして彼等は闇に消えてしまった。
 

「よーしっ!ここはパーっと歌おうみちるちゃん」
 背中をドンと叩かれて笑顔を作る。
 楽しい。
 けれど寂しい。

 




 ちんまりとベッドの上に置かれた茶封筒と包みが一つずつ。
 暦さんと蘇鉄さんにもらった(趣味じゃない)服を包みの横に置く。 
 ひっくり返してみても何も書いていない。
 誰宛かわからなくて端によけた。


 横になって天井を見る。
 ここに来てからどのくらいの月日が経ったんだろう。
 死にかけたこともあった。
 でも、私は、生きている。
 それが何より嬉しい。


「ありがと」

 
「べ、別にお前が誕生日だとかってわけじゃないからな」
 窓がガッと開いて知佳くんと思徒くんが入ってきた。
 私を見た後包みと茶封筒を見て二人の動きが止まる。


 あぁ、これは2人からのプレゼントだったんだ。
「ありがとうございます」
 もう一度心からお礼を言った。
 

「こりゃあれだって…なぁ、シト」
「そ、そうだ。アレだ」
 普段はきはきものを言う2人にしては珍しく口調が濁る。
「これって私の誕生日祝ってくれたんじゃ」
「ちげーよ。今日は俺とシトの誕生日のちょうど真ん中の日だぜ」


「何言ってんのチカ。二人の誕生日の間って21日だよ?」
 ガバーンと爆音を立ててドアが開く。
「恥ずかしがんなって」
 暦さんと蘇鉄さんがニヤニヤと二人を見ていた。


 コホンと思徒くんが咳払いをする。
「それが違うのだな。今年は閏年だから21も22も正解でな」
「今流行りのツンデレか?」
 あれ?ヨミ…さん?


「こんなバカはほっといてちるちる、誕生日なんだってね」
 肩に手が回ってきたあたり間違いなくヨミさんだ。
「だからオレと思徒の真ん中バースデーだからよぉ、おすそわけだ」
「眼鏡ふきとはなかなか実用的なものじゃないか。
 キミ、メガネかけてたっけ?」
 私を間に口論は続く。


「シト坊は現金か。
 ったく…お前らしいというかなんというか」
「え、現金なんていただけません」
 思徒くんの金銭感覚は食玩に対する愛情で分かる通り少し変わっている。


「みちるちゃん、ありがたくもらっとけ」
 蘇鉄さんから手渡されたのは1000円札一枚。
 千円なら…いいのかな?
「2人とも、ありがとうございます」


 なおも2人は真ん中バースデーと言い続けたけどそれは恋人同士がするものだと気付いていないようだった。


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