男が二人も集まれば話なんて自ずと決まってくる。 なんていったって俺らは若い。 ちなみに今回はシモには走らず純情路線だ。 「芝の好きな奴って誰だ?」 純情路線をまっすぐ歩んでいる知佳に聞かれた。 それはね― 口をおもいっきり両手でふさがれた。 ペチッて音鳴ったし。 そんな些細な音なんて気にしない知佳は言葉を続ける。 「あ、言うなよ、当てるから」 どんな企画だよ。 しかもいる前提なんだ。 あまりに楽しそうな目で見つめてくるから遮れやしない。 …まさか最初からわかっててやってるんじゃないだろうな。 知佳に対して甘いということは自分でも自覚している。 「じゃぁなー、おまえの好みのタイプを言え!」 はい、心配終了。 そうだよ、知佳が謀なんてするわけがない。 俺じゃないんだから。 「ノーコメントとか無しな」 何が何でも当てるつもりらしい。 この際だから言えばいっか。 軽いノリで思えるのは知佳を信じているから。 例え振られてもちゃんと親友のままで居てくれる。 そう確信している。 キラキラ光る眼差しが痛い。 というか眩しい。 こんな時の知佳は絶対に引き下がらない。 諦めて告白ルートを辿るしかないのだろう。 「答えれるのは1回だけだからね」 「まずはねぇ…俺より背の低い子」 やっぱそこは勝っときたいじゃん? 知佳も頷く。 同意を得たのに心が痛い。 「お前より低い奴はそう居ねぇけどな」 「…まぁ男の子ですから」 いや、普通に俺より高い子もいる。 背の順の後ろの方なんてほとんどそうだ。 もっとも、知佳は最近ぬかしたばかりで余り差は無い。 また抜かれる可能性だって無いわけじゃない。 結局、巧妙に逃げ道を作った上での発言なんだ。 勇気が無い。 知佳を失うことが何より怖い。 いつからこんな人間になっちゃったんだろう。 もっと強いつもりだったのに。 でも同時に判ってしまえばいいと思ってるのだから手にも負えない。 自虐癖の新しい形だったら嫌だな。 純粋に溢れ出る気持ちであってほしい。 あくまでも希望。 知佳は考え込むのをやめて両手をあげた。 「次」 これでわかればエスパーになれる。 それに、表情を偽るのには自信がある。 誇れることじゃないけど。 「あとはねぇ、色気とか?」 知佳のしぐさってところどころが物凄く色っぽい時があるんだよね。 ベタだけど振り向いた時とか。 「年上かよ。お前らしいなぁ」 「…さぁ、どうだろうね」 色っぽい=年上か。 まぁ年下に臨むにはいささか俺らは若すぎるんだろうけれども。 でも同じ年ってありじゃないの? ってか普通に考えて同級生でしょ。 …でもそこで「お前らしい」と来たからな。 俺ってそうゆうイメージ? 率直に聞いてみることにする。 「俺って年上が好きそうに見える?」 「なんつーか…」 え、濁すようなところ? ほんとにどんなイメージ。 「お前ってあんまり同級生とか好きじゃ無くね?」 当たり。 だなんて声に出せるはずもなく適当に流す。 当たり障り無くしてるつもりなんだけどなぁ。 俺が機嫌を損ねたとでも思っているのか知佳が顔を覗き込んでくる。 「違ったら、良いんだけど…な」 悪いことを言ったと思ってるんだろう。 違うのに。 思った事を口に出してしまうまっすぐな所も好きで仕方がない。 知佳の頭を撫でたくなって本題を思い出す。 「他にはね、まっすぐな子」 一瞬キョトンとした知佳。 思い出したのかまた何かを考えるような顔に戻る。 「やっぱ年上かよ」 「え…なんでそうなんの?」 背と年は関係ないだろ。 色気とまっすぐになんの関係があるんだろう。 知佳の考えをたどるのは時に面白く、時に分からなくて1日中悩んでしまう。 「ほら、学校はパーマ禁止だろ。 大人とかはけっこう巻いたりしてんじゃんかよ」 …パーマ? 髪型? 「いや、髪じゃなくて性格の話で」 「あ、そっちか。オレの頭見ながら言うから」 確かに頭を撫でたいとか考えてた。 きっと尖った髪型を見ていたのだろう。 「髪は黒い方が良いかなってくらいで髪型はそんなに気にしないよ」 自分の色素の薄い髪を見ると少しだけ黒髪に憧れたりする。 染めるほどでも無いけど、なんとなく。 「あとは無邪気で」 「なるほどな、ギャップってわけか」 まっすぐと無邪気ってよく考えたら一緒じゃん。 さっきの知佳のオモシロ発現にこちらまで影響されたみたいだ。 「よし、決めた」 分かったじゃないんだ。 まるで遊びだったのだと気づく。 もちろん分かったらわかったで楽しむつもりだったのだろうけど。 やはり答えは外れでチャイムも鳴ったのでこの話はここで落ち着いた。 「…振り返るとか後悔とか好きじゃないんだけどなぁ」 「助けてやったのに反省くらいしろよ!!!」 顔の半分を包帯で覆った子に言われても。 まぁ辺鄙なところまでわざわざ迎えに来てくれたんだし感謝くらいはするべきだろう。 「ありがとう」 「好きだよ」 知佳じゃなきゃこんなに簡単に言えるのに。