「来世で俺が男だったら絶対に徹ちゃん犯してやるから覚えとけよ」
「なにそれ来世でも恋人になろうって話?」
 愛されてるなぁ俺と呟くと動かすのもおっくうだと言っていた足に踏みつけられた。
 睨みつけられても全然怖くない。
 むしろ愛らしくて仕方がない。
 夏野の照れ隠しは少し過激だと知っていたから。


「あははっ、なにこれー」
「棒読み」
 感情もこもらなくなるさ。
 だって笑えない。
 どこで拾ってきたのか荒縄でぐるぐるにベッドに張り付けられてるなんて笑えなさすぎる。
 製材所か?
 それとも学校?大掃除だったし。


「ちょっと待ってよ、夏野ってば」
「名前で呼ぶなって言ってんだろ」
「ちょ、本当にごめんなさいだから、小出・結城さん」
「何について謝ってんの?」
 口の端を上げながらまたがってくる夏野に恐怖する。
「いや、だから」
「謝るようなことしたんだ」
 

 なんだこれ。
 話せば話すほどドつぼにはまっていく。
 え、どんなマインスイーパ?
 進むほど爆弾に当たる確率が増えるとかどうしろというのさ。
「話せばわかる」
「だから何を」
「怒ってるんだろ」
「…別に」
 こないだ怒ってたもんな。
 来世に犯してやるって呻いてたもんな。


「あの時はほんとすみませんでした」
「だからどの時だってんだよ」
「いや、だからあの…」
 言葉は物理的にかき消される。
 普段ならそれは喜ばしいことだけど今は怖くて仕方がないキス。
 あの、体重を首にかけないでください。
 俺、殺されてしまうのでせうか。 
 ここであの言葉が再度蘇る。



 来世で俺が男だったら絶対に徹ちゃん犯してやるから覚えとけよ



「殺されるーっ!!!」
 殺して来世で犯される。
 声を大にして叫んだね。
 しまってた首が解放されてすぐに。
 最も、部屋でばか騒ぎするのはよくあることなので家族の誰も来なかった訳だが結果オーライ。
 俺の首は無事に絞殺されることなくことなきを得てる。


「徹ちゃん…とうとう頭にまでヤキがまわった?」
「思いつめた夏野に言われたくないよ」
「思いつめて何かねーよ。
 たださ、俺だって男…だからたまには徹ちゃんにキスとかしてみたいなって。
 別に現状に不満があるってわけじゃないし。
 そりゃえっち痛かったけど、だから徹ちゃんにいれたいかって聞かれると微妙だなって。
 俺よりでけーし重いし別にこのままでもいいし…」


「…?ごめん、俺バカだからさ、要約してほしいかも」
「だから、徹ちゃん暴れんなよって話」
「それだけ?」
「徹ちゃんさ、ねぞう悪いし」
 そうそう起きたら良くベッドから落ちてるんだよね。
 じゃなくて。


「そっか」
「うん」
「縄外してくれると嬉しいんだけど」
「うん」


 そうだ、夏野は照れ屋さんだったんだ。


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