=認めて=


「俺、獄寺のこと好きだ」


 言われた本人は胡散臭そうな目で俺を見た。
「だから?」
 だるそうに髪をかきあげる様はいつもと違って大人っぽい。
 その姿に好きだという気持ちがますます顔を出す。


「好きなんだ」
 もう一度、苦しげに呟く。
 獄寺は心底くだらないとばかりにため息をついた。
「それは聞いた。だから、なんで、俺、なんだ」
 一言ひとこと区切らなくても意味は分かる。
 分かったから答えた。


「ずっと気になってたから」
 再度、獄寺は大きなため息をついく。
 話は終わりとばかりに腰かけていた机から降りた。
「湧いたか、野球バカ」
 そう、馬鹿なんだ。


 馬鹿で人の考えることとか予想できない、そんな男。
 それが俺、山本武。
 俺は、人殺し。


「好き」
 自分が死ぬかと思った時、お前の顔が浮かんだんだ。
「っざけんな」


「なぁ、好きなんだ」
 スクアーロを殺したかと思った時、失いたくないだなんて思った。
「縋んな、死ね」


 縋ってなんかいない。
 それにこんなにも死にたくないと思っている。
 死ぬとか生きるとか好きとか嫌いとか全部全部思い知らされた。



 もう戻れない。






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 普通の中学生で、人を殺したと思ってて、結局殺して無かったけどその事実は消えない。
 だなんて状況に追い込まれてもしも一人の顔が浮かんだとしたなら、それは恋なんだと思ってもおかしくないはず。
 でも獄寺は認めない。恋だなんて弱さからくるものだと思い込んでるから。


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