オタクとは当事者であってはならない。
 そんな先人の言葉が残されているわけではないがそう思う。
 いわば持論なのだろう。

 例えば男同士の恋愛が好きな女がいる。
 だからと言って男になりたい訳ではないのだろう。
 本人はどちらかというと女同士の恋愛の道に既に踏み出しているように見える。
 
 例えばロボット大好きな会長がいる。
 もちろん本人はロボットではない。
 ロボットを嫁と呼んでいても本人はロボットになりたい訳ではない。

 もう1人の役員はと言えば、例外なのかもしれない。
 強いて言うならば男目線で女子を辱めたい訳ではないだろう。
 恋は男にするのだとも思う。

 このことからもわかるように、オタクは自分がその対象になりたいわけではないのだ。
 恋をすることとは別の動力で起動しいている。
 さながらバイオ燃料とでも言おうか。
 とにかく普通から少し外れた原動力を持っている、それだけなのだ。

「秀、健くんは今日も可愛いわね」
 夏目は飽きもせずに秀×健を推してくる。
 もっともこいつは三次元の男同士ですら許容範囲内だ。
 オタパワーという常識外れのエネルギーのことを考えると寒いものを感じる。

「そうか」
 ここは肯定も否定もしないことにした。
 唯一、腐女子コメントが避けられるルートと判断したからだ。
「さすが秀。
 見なくても俺の嫁はいっつもキュートだぜってことね、うん、わかる」
 キュートという言葉のチョイスに少し小学生的要素を感じ取った。
 ちょっとませた小学生高学年というところか。
 幼女か微妙なところだな。
 ありだが。

「あいつは幼女じゃない」
「そんなのあんたの勝手じゃない」
 お前は勝手だ。
 そろそろ問答を繰り返すことにも飽きてきたので同人誌を開く。
 するとさすがの夏目も静かになる。
 読書中の会話はマナー違反だ。

 文字の羅列に目を通しながら、読んでいるわけでは無い状態で考えた。

 斉藤と俺がくっつくことなんてない。
 そもそも俺に恋愛感情は無い。
 結局そこに行きついた。
 幼女は愛しているが、結婚も出来ない。
 当り前だがセックスもしない。
 法律はある程度当り前のことを言っていると思うのだ。
 
 そもそもなぜ幼児なのか。
 女ではだめなのか。
 …気持ちが悪い。
 女自体は大丈夫だが、女が、セックスが気持ち悪い。
 子供が生まれるかもしれない行為が気持ち悪い。
 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 最初は消去論だったのだ。
 同年代の女が怖い、なら愛せるのは年下だけではないか。
 年上は性格的にも肉体的にも許容できない。
 ここで男という選択肢を当時思いつかなかった。

 もしも愛するということを見つけ出せられれば
 斉藤を愛する可能性だって全くない訳ではないのだ。


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