=アカシロ=


 こんなに月が綺麗だ。
 こんなに・・・。
「おい、てめぇ」
「・・・何だよ、日光浴の時間じゃねぇぞ」
 

 別に敵船が来たあとでもない。
 もちろんオレは敵じゃない。
 殺意もなけりゃ、てめぇに興味も無い。
 なのに何故おまえに刀を向けられなきゃならない。


 あ、そっか。
 てめぇ魔獣だもんな。
 思ったほど切れなかった腕を奴にむけた。
「腹でも減ったか?」
 血の匂いでよ。


「何してんだ一体」
「何に見える、てめぇの眼には」
 こんなオレの姿。


 今日は別に普通だった。
 昨日も一昨日も変わりなかった。
 ただ、眠れなかった。
 ここ数日、ろくに寝れていなかった。


 眠い。
 寝たい。
 血の気がひいていく。
 もともと色白だから誰も気付かない。


 倒れる。
 そう思っても身体は意外と丈夫だ。
 気持ちとしてはもう死にそうなのに身体はいつも通り働いている。
 

 それでも死んだ気持ちが刃先を狂わせた。
「うわっちゃー・・・」
 血が滲む。
 日ごろから白い腕、そこから流れる様は奇妙だった。
 そういえばゾロの故郷には紅白まんじゅうというものがあるらしい。
 何もめでたかねぇよ、この野郎。
 むしろオレ、怪我したぞ。
 

 そんな異質な液体もまな板につけば普通だった。
 魚や動物の血がしみこんだまな板。
 ある意味、刃物より怖い存在かもしれない。
 血を吸ってる数はあの剣士の刀の上をいくだろう。


 人間の血はまずいよなと思い、急いで洗い流した。 
 当分、日干しだな。






 その頃からだ。
 時たまゾロににらまれだしたのは。
 そんなに機嫌を損ねるならこっちなんか見なけりゃいいのに。
 

 そして奴はとうとう縄張りに入り込んできた。
「そんなことすんな」
 直球で来やがった。
「そんなことってどんなことだよ?」
 オレには変化球しか投げられない。
「お前を傷つけるな」
 リスカって言葉知らねぇのか、ばーか。



「俺の大切なもん傷つけるやつはお前でも許さない」



 オレはお前にどう見えてる?
 紅白の取り合わせの効力なのだろうか?


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