=最終形態=


「萌太くん…」
 本当は分かっている。
 君にこんなことを願うべきじゃない。
「でも、ぼくは、失いたく、ない…んだ」
 ずっと解ってたのにやっと気付いた。



 友が、好きだ。

 

 玖渚友のことが好きだ。
 好きだと言葉にできないくらいに好きだ。
 萌太くん―君とは違って、愛している。


「いー兄」
 聞こえるはずのない声が聞こえた。


 これは幻聴だ。
 夢だ。僕に都合のいい夢なんだ。
 

 声の方向にそっと視線をやってしまうぼく。
 萌太くんはいつものように笑っていた。
 やっぱり―幻覚だ。
 

 あぁ、今日も血が凍るほど綺麗だよ。


「僕の望みは貴方の、いー兄の、望み」
 やっぱり優しすぎる。
 夢は夢と割り切ってお礼の1つでも言えたらいいのだけどぼくはそん
 な気の利いた言葉のひとつもかけられずにいた。


「ごめん」
 嘘じゃなかったはずなんだ。
 ぼくと君の時間は存在した、確固たる事実。
 好きだと思った。
 君の気持ちを満たしてあげたいだなんて思った。
 

「僕の望みは」
 ぼくの、望み、は…。
 君が欲しかったわけじゃなく君に笑って欲しかった。
 ぼくの隣で。


 求めてはいけない。
 奪ってはいけない。
 今ここで愛の形を提示しよう。
 これがぼくの見つけた本当の意味での愛。



「友に生きて欲しいんです」
 ただ、それだけなんです。


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