=安眠妨害愉快犯= こんな言葉であらわすのもどうかと思うけどそれでもぼくはあえて、「ぼく」がそこに 居たと言おう。 「何してんの」 ぼくの安眠を邪魔することはそんなに愉快なのだろうか。 鏡の向こうの奴は嬉しそうに笑っていた。 「よっす、元気か?」 「君に起こされるまではね」 「そろそろ起きなかったら永眠させてたかもしんねぇぜ?」 「・・・おはよう」 実はぼくの命は風前の灯だったようだ。 あれ? 何か大事なことを忘れてるような。 「扉は壊した、修理しといてくれよな」 いや、そんなことじゃなくて。 「って何してんだよ!」 こいつ、修理代いくらかかると思ってるんだ。 昼食何日か抜きかもしれない。 ・・・情けないけど崩子ちゃんとこに食べ物もらいにいかなくちゃ。 うわー。 「いや、何?開けようと思ったら壊れたっての?」 「壊しといてそのうえ人の家に文句を君は言うと―」 かはは、そうなるな、と零崎は笑った。 笑い事じゃないんだよ、こっちは。 生命保険っていくらだろう。 そんなよしなしことまで考えてしまう。 あ、思い出した。 「君、なんで生きてるの?」 わりと大切。 人の生き死にかかってるんだから。 いや、こいつの場合は違うのか? なんってったって殺人鬼だし。 「あー、なんでか」 「ふーん、なんでか」 なんでかじゃねぇよ! とシト君ばりにつっこむ気力は今の寝起きのぼくにはない。 あの子、今どこいるんだろう。 おもしろかったなぁ、のりつっこみ。 また現実逃避をしてしまった。 「あとなんでうちに居んの?」 「あー、なんでか」 「なんでかじゃねぇよ!」 次は口に出してみた。 そんな隣の家に行くのりで着てたぞこいつ。 手ぶらだし。 いや、ナイフは持ってるのかもしれないけどさ。 そんなの土産の数に入らない。 「まぁさ、そのさ、会いたかったんだよ」 「みい子さんには手を出すなよ」 ちげぇよ、と零崎は呟いた。 「何が違うっての?」 「おまえ」 零崎はぼくに指をさした。 分かってる、それ。 自分で自分をさしてるという愚かな行為だよ? だなんていうまでもなさそうだったので言わないでおく。 「おまえにあうために来た」 鏡の向こう側の命懸けの恋に気付いた日。 <<