=倒置法= 「…どうでもいい話して良いか?」 珍しく暇な日だった。 やはり宵風が居ない時に連絡もなしにやってきた雷光と2人で、何をするわけでもなく ソファに隣り合って座っていた。 だからだろう、こんなくだらないことを考えてしまったのは。 「どうぞ」 やっぱやめとこう。 どうせこいつのことだ、鼻で笑って返される。 いや、「先輩そんなに私のことが好きなのですか」とからかわれるのが関の山だ。 「やっぱ良いわ」 「そう言われましても気になるのですけれど」 擦り寄られてその分だけまた離れる。 どうもこいつと接触するのは苦手だ。 誰だったら大丈夫だなんてことはないが。 「話してくださいますよね。 だって私は既に興味を持ってしまっているのですから、あなたの話に」 自然に太ももにおかれた掌が不自然な動きをしだす。 ピンク頭のガキが。 「お前って話し方がなんか倒置法じゃね?」 「そうですか? 自分の癖というものはなかなかに理解できるものではありませんからね。 もっとも、先輩がおっしゃるならその通りですよ、きっと。 貴方ほど私という人間を観察している方はいないのですから」 想像していた通りだ。 こんな些細なことに気づくオレはとっくにこいつにいかれちまってる。 嫌な言い方すんなよなと形だけ嫌がってみてもまぁその通りなんだろう。 だから気になる。 まるで英語のような単語の並べ方に。 英語なら大事なことを先に伝えるため。 「どうせ煙に巻きたいだけなんだろうけどな」 もしくは効果的に人間を陥れるための狡猾な罠か。 「あなたに届いてほしい言葉を最後に言っているだけですよ」 だって、メモ中毒の先輩には長い文章は覚えられないでしょう? そう言って雷光はころころと笑うのだった。 <<