貼りつく癖


「相手の目をまっすぐ見ることは誠意に繋がるらしいよ」
 誠意と言う言葉から縁遠そうな2人の間での会話に劉はおかしくなった。
「まぁ分からなくもないよね」
 考え込むように黙った男を見て、この内容は相手にとっておもしろいものではないこと
 に気付いたけどあえてフォローしようとは思わなかった。
 そんなことを気にする人間なら、当然のように居座った客でも無い人間を店に置きはし
 ないだろうと考えたからだ。
 わりと思慮深い性格なのである。
 …自分で言っちゃった☆

「視線程度で人を推し量ろうとする人間は愚かだねぇ、いかにも愚直の好きそうな話だ」
 あの沈黙の上に何もなかったように返事をしてくるとは。
 人間と言うものの認識が毎度覆されて笑いは絶えない。
「それにしても君は本当にひとでなしだね」
「断定かい?」
 うん。

「ところで針士には盲人が多いらしいね」
「整体師の間違いじゃないかなぁ」
「見えるのかい?」
「君こそ見てないの、我のこと」
 滑るように近づいて、そのまま机に押し倒した。

「そうだな、例えるならスカートだ。
 どれだけ戦っても飛び回っても翻りこそすれ中身は見えない」
「いったい何の話を」
「キミの髪の話」
 どんな運動をしても見えない。
 とっさの運動にすらなびかないのだから、やはり鉄壁だ。

「万有引力をご存じかな?」
「まぁ我は知らないんだけどね」
 知ってくるくせにはぐらかす癖はもはや職業病に近い。
「慣性の法則…の方が正しいのかもしれない」
「なんだ、知ってるんだ」
 知ったかぶりを気取ってみる我と知らないふりを決め込む君。
 あぁお似合いじゃないかだなんて言わないけれど。

「眼でものを言うって言葉があるよね」
「口に出すことを面倒くさいと思うようじゃおしまいだ」
「終わってるんじゃないかな?」
「誰の話だろう」
「我と君の話でしょ?」


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