=洗礼者=

 浸食されていく。  こみあげる嗚咽。  必死に押し殺す俺のかわいくてかわいそうなアレルヤ。 「そんなに嬉しいかァ?」  俺が戻ってきて。  眼前に迫った敵機を撃墜しながら問う。 「…うん」  とうとう涙がにじみ出し、勢いよく首肯しだす奴の首の付け根を押さえて前を向かせる。  ”思考”のお前が取り乱してどうすんだよ、と。 「ねぇハレルヤ」 「んだよ」  それっきり黙り込んで黙々と戦闘に身を投じるアレルヤ。  めっきり腕が上がっていた。 「もう統合してやるからさ」  敵機負傷、すかさずもう1発。  何の躊躇いもなくアレルヤは攻撃した。  統合だのなんだの言ってみたけどさ…もう俺いらねーじゃん。  立派に戦っていた。  思考を俺の方に向けながら身体は反射のように引き金を引く。 「ハレルヤって呼ぶのやめろよ」 「ハ…なんで?」  一瞬、腕が止まった。 「お前の一部になっからもう同じ名前でいいんだ。  …いいんだけどさ、俺はハプティズムになりたい」 「意味がわからないよハレルヤ」  わからないだろうよ。  あぁ、そうだ。  自分でもよく分かっちゃいないんだからな。  だけどふと思っちまったんだ。  俺にとっちゃお前が神だったんだと。  感謝しているのはあの女じゃなくて俺。  だから俺がハプティズム。 「勝手すぎる」 「知ってんよ」  名字も名前も俺達には同じもの。  引き継ぐ家も何もないんだから。  なら俺とお前で一つになれば良いじゃないか。  意志とは関係なく吸収されていく己の自我の中、そう思った。 「ハレルヤ、ハプティズム。  目標を駆逐する」  感謝するのは僕の方なんだ。  吸収したのは僕かキミか。  統合されたのはハレルヤかアレルヤか。  もともと僕らは1つに生れついたのか否か。 「ハレルヤ」  小さくつぶやく声は周囲の爆音にかき消される。  生まれ変わった双脚の獣は宇宙に身を投じた。  <<