=約束=
お互い察していたのだろう。 僕たちは初めて唇をあわせた。 睫毛がふれるほど近くで見つめあって、何度も。 僕は貴方ではないし貴方は僕でない。 あの人じゃない。 「ひとつ、お願いがあるんです」 早々に煙草をふかし始めた彼に言う。 気だるげに振り返り彼、ライルは聞いてくれるようだった。 「僕はロックオン、いや、ニールが大好きでした」 「…俺もだよ」 少しはにかむあの人そっくりの顔だけどやはり違う。 「貴方をニールの代わりにしていました」 言葉にされるときついのなと笑われる。 そのあと、真剣な顔をしてもう一度、俺もだと呟いた。 ですよね。 だよな。 笑いあう。 「もう、止めましょう」 ぴたりと笑顔が固まる。 きっと僕はそれ以上にとんでもない顔をしているのだろう。 わざわざ約束をする必要なんてなかった。 もうすぐこの戦いは終わる。 けれど形にしたかったのだ。 うん、僕のエゴ。 「お願い…ってさっき言ってたな」 はいと大きく頷く。 「もしも次に会えたら、貴方のご家族のお墓の場所を教えてください」 「あの人の骨は埋まっちゃいねーぜ」 「ロックオンの生きていた証が欲しいんです」 数年前まで定期的に俺の通帳にふりこんできていたという証拠を見せようかと思った。 家族の写真だってある。 …でも違うんだろな。 「今じゃなくて良いのか?」 俺、死んじゃうかもよと嘯いてみたけど冗談には聞こえなかった。 言霊で死ぬかもしれない。 「貴方が案内してください。 家があった場所や、よく行ったところ」 「お願いは1つじゃなかったのかよ」 「はい、僕、嘘をつきました」 真面目腐った顔でそう言い放つバカの額をつついて最後のキスをお見舞いしてやった。 <<