「起きたか」 「えぇ、とても良い目覚めです」 目を覚ますとそこにはロックオンが居て、穏やかな時間があった。 僕は帰ってきたんだ。 大好きな人を見て起きる。 昨日までのことが嘘みたいだ。 少しも変わっていない彼に安堵する。 4年の歳月は僕と彼とを引き剥がせなかったようだ。 あまりに暖かい雰囲気に思わず笑ってしまった。 困ったようにロックオンも笑う。 「ただいま、ロックオン」 帰ってこれたんだね、日常に。 ありがとう。 そんな気持ちをこめて言った。 今なら神様だって信じられるかもしれない。 「いや、はじめましてだ、アレルヤ・ハプティズム」 手が差し出される。 「俺のコードネームはロックオン・ストラトス。 2代目だと思ってくれれば良い。 前の様に接してくれるのも構わない。 お前さんの好きなようにしてくれ。 …恋人だったんだろ?」 「何…言ってるの?」 2代目? でも僕と彼が恋人であると知っている。 「わからないよ、ロックオン」 だろうなと、彼とそっくりに笑い、ロックオンは情報端末をポケットから出した。 変わった形や色をしている訳でもない普通の情報端末だ。 「刹那にこれを渡された。 ニールの部屋にあったのを見つけたらしい」 「…ニール?」 「あぁ、ニールだ。お前の恋人の方のロックオンさ」 本名なのだろうか。 聞いたことのない名前だった。 そういえば何も知らなかった。 今、目の前にいる人のことも何もわからない。 「早い話が日記だったよ。 映像と音声の、な。 ガンダムマイスターになったことや日常で起こったこと。 それと…アレルヤ・ハプティズムのことについて。 ご丁寧に遺書のようにな」 端末をにらみつける彼はロックオンではなかった。 ロックオンはもういない。 「そんな顔すんなよ」 頭をなでられた。 手の大きさも長い指もそっくりだ。 だけど違う。 「アレルヤ、笑ってくれよ」 同じ声で言わないで。 「なぁ、アレルヤ―」 「呼ばないでください」 「…あぁ」 「違うんです、すみません。 その、なんて言えばいいかわからないんですけれど…。 えーと、無理してロックオンの真似をしないでください」 きょとんと何か僕がおかしなことをしたみたいな顔をしている。 次の瞬間、それはもうおかしそうに笑い始めた。 「どうしたんですか?」 聞いたことはないけれど笑うという行為が伴う発作でもあるのかもしれない。 息が吸えないほど笑っている彼の背中をさする。 「いや…はっ、大丈夫」 「なら良いんですけど」 少し落ち着いたのか、彼は大きく深呼吸を始める。 僕はそれをただ見ている。 なんだか僕の心はひどく落ち着いている。 「ニールのこと、好きか?」 「えぇ、もちろん」 4年間彼を思わなかった日はないといえば嘘になるけれど、ずっと沈めて苦しみのあまり、 叫んでしまうことを恐れるくらいに大切な思い出だった。 ロックオンは死んでしまった。 「俺のことは?」 「大切な、仲間ですよね。 これからよろしく」 彼の手を無理やりつかんで握手を交わした。
END ライアレが始まる予感。 <<