=ダンシング・モルモット=

 ふと、視界が変わった。  スイッチが入ったように切り替わった世界は見慣れた自室で、アレルヤは自分が夢から  覚めたことに気付く。 「おはよう、ハレルヤ」  無意味に笑顔を作り話しかけるも部屋の照明は落ち、自分の時計を探す掌も見えない。  一向に返事は無くうすうす早く起きすぎたのだと思った。  ハレルヤの体内時計は同じ身体を所有するはずなのに酷く正確だ。  手探りで見つけ、時計を発光させると起床を設定していた時間よりやはり半時間ほど早  かった。  小さくため息をつく。 「ハレルヤ、呼んでごめんね。  僕はもう少し寝るべきだったよ」 「謝ってすむかよ」  眠っていたはずのハレルヤの声が聞こえる。  心なしか通常時より声が低い。  低血圧なのかもしれないとアレルヤは同じ身体を所有するというのに片割れの心配をし  始めた。 「誰が低血圧だって?」  君が、と口に出そうとしてやめる。  どうせ言葉にしなくても彼にはなんでも筒抜けだ。  その通りとハレルヤが口の端を歪めるのが目に映るようだった。 「今日はミッションがあるからね。  緊張して起きちゃったみたいだよ」  だろうな、と鼻で笑われた。  笑わないでと頬を膨らませてみると心のこもっていない謝辞が述べられた。  ハレルヤは酷く僕に弱い。  だって反論が無いってことは聞こえてないってこと。  僕は君に伝えないという術も持ってるんだよ。  なのにハレルヤはアレルヤを寝かしつけようとしてくる。  征服欲だなんてたいそうなものでもないけれど何かが満たされる。  僕は君を利用しているんだ。  
 黒いアレルヤと踊らされているハレルヤ。  <<