=目隠し鬼=


「隊長は自分を省みなさすぎです」
 山崎の奴、うるさい。
「いつもはサボってばかりなくせに・・。
 なんで危険なことには勤勉なんですか?」 
 失礼なこと言ってくれるじゃねぇか。
 まぁ間違っちゃいねぇけどさぁ。


「副長と言い隊長と言い揃いもそろって怪我しすぎですよ」
 普段ならバズーカー構えてるな、今頃。
「もしもかすっただけじゃなかったら失明してたんですよ。
 わかってますか?」
 さすがに今日は狙いが定められやしないから無理だわな。


「へいへい」
 おざなりにでも返事したから守ってやるよ。
 こいつは間違ったことは言わないって分かってるから。


 山崎はため息をつきながら立ち上がった。
「あなたのことだからどうせ仕事なんてしないでしょうけど…。
 くれぐも一晩は包帯を外さないでくださいね」 
 襖をあける音がしてお大事に、と言う声がしたと思えば閉まった。


 ひさびさに手強い奴がいた。
 レベル土方・・・よりちょっと下。
 剣ならこっちのもんだと思ってたのに。
「赤いんだけどォ・・・」
 瞼にも血が通ってることが分かる。
 こうやって血を見なきゃ生きてると思えないってのもどうなんだろう。
 山崎の声がして、そのまま寝た。

 
 剣の腕を誇っている以上、視力を失うのはいただけない。
 クソが、顔に一線描いてくれやがって。
 まぁ山崎はあれでも一流だから治るんだろうけど。


「ったく、仕込み刀とは攘夷浪士も無駄に手がこんでやがる」
「・・・なんですかィ、土方さん。
 油断したって笑いにきたんですかィ?」
 嘘だ。
 気付かなかった。
 普段から奴の位置は常に把握してたつもりなのに。
「山崎に怒られてな。今日は安静にしてろってさ」
 自嘲気味なかすれた笑いが聞こえた。


「チッ。そのままくたばれば良かったのに」
「残念だったな。っでついでにお前の監視もしとけってさ」
 逃げるわけねーのになと鼻で笑った。
 逃げれないと悲鳴をあげたくなった。
「それにしてもぐるぐる巻きにされてよぉ。
 ホントに見えなかったりすんのか?」
「黙れ、死ね土方」
 うるせーよ、と静かな返答が聞こえた。


「・・・怒らないんですねィ」
 いつもならマッハで追いかけてくるか抜刀するかお前も死ねとか返ってくるのに。
「お前、ほんと怪我以外無事みたいだな」
 怒ってほしい。
 こんな労りの言葉なんて気持ちが悪いだけだ。

  
「怒れよ、何怪我してんだってどなれよ!」
「サド王子が何言ってんだか。
 ったく、お前に鏡で見せてやりたいな」
「オレ実は額にもう一個眼があるんです―」
「そんな顔して無理すんなよ」
 どんな顔?


 可愛くない?
 あんたは好きじゃない?
 死にそう?
 オレなんか嫌い?



 だからどうした?



 手を叩く音がした。
「何事ですかぃ?」
「迷子の誘導だよ」


 出口がどうも見当たらない。


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